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― トッピクス ―
米国は中国がWTO(世界貿易機関)に加盟した2001年以降に、貿易赤字が急速に膨らんだ。
製造業の雇用は3割も減ったという。かって鉄鋼や自動車産業が盛んだった五大湖周辺の工場は、海外の競争に敗れてつぶれ、ラストベルト(さびついた工場地帯)と称されるようになり、地域や人々が低所得で苦しんでいる。
トランプ政権は製造業の再構築を目指して関税を持ち出してきた。自由貿易の旗を振ってきたはずの米国は高関税を振りかざし、ワシントンで開かれたG20(20ヶ国の財務省・中央銀行総裁会議)でも各国の批判を浴びることになった。トランプ米大統領は高関税政策を巡って、二転三転するなど市場を混乱に陥れる言動は目に余る。世界経済の下振れ懸念が強まるなか各国は強調して米国に軌道修正を促してほしいと思う。
世界はグローバル経済を掲げて、最も安く作れる所で物を生産して先進国に供給してきた。物を造らない国の代表格が米国とヨーロッパである。日本も超円高の時代に安い労働力を求めて工場を海外に移転してきた。この影響を受けて日本の製造業も空洞化が進んでいる。日本人は国際交渉力に弱いが、品物を造ることに長けている。そこを支えているのが中小零細企業である。
数年前、首相お抱えのアトキンソン氏は「日本の生産性は低い、最大の原因は中小企業だ。中小企業は消えてもらうしかない」と中小零細企業は不要と言って、無くすことを進言していた。とんでもない事を言っている、それを真面目に受けとる政治家がいることに愕然とした。トランプ氏は製造業の復活を試みていることは評価するが、自国の過ちを他国に押し付けることでは解決しないと思う。
ここ20年で起こっている米国や欧州の製造業の衰退の惨状を見て、日本は「他山の石」としてとらえ、独自の考えを持って政策を進めてもらいたい。
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